都会で天の川を見る方法

随分前のことになりますが、スラッシュドットで話題として取り上げられた、「世界の5人に1人は夜、天の川が見られない」に関連してちょっと一言。

都会では光害が進み、夜空が明るくなり、天の川が見えなくなっているとのことですが、コメントを読んでいると、天の川そのものに関する知識が乏しいことがうかがわれます。天の川に関する知識が全くない人が、夜空を見上げて、実際には天の川がうすっらと見えていたとしても、どれが天の川なのかは分からないでしょう。視力はあまり関係ありません。私は視力が悪く、プレアデス(昴)星団はぼんやりとしか見えませんが、それでも天の川は簡単に確認できます。

天の川は私たちの太陽系が属する銀河系です。銀河系は平べったい円盤状の形をしており、太陽系は中心から2/3くらい離れたところにあります。中心は、夏の星座であるいて座方向にあります。天頂付近から、こと座、白鳥座、わし座、そして、いて座やさそり座付近に天の川が流れています。中心から逆向きの方向は冬の星座があり、オリオン座が代表的でしょう。

いて座付近の銀河が最も明るいのですが、日本の夏は空気がどんよりしていて、星があまり見えません。冬なら空気が澄んでいる日が多く、天気が良く凍てつくような夜には、都会でも驚くくらい星が見えることがあります。その冬に夏の星座をみることができれば、都会でも天の川を見るチャンスがあります。

真夏のオリオン」ならぬ「真冬のシグナス(白鳥)」を見るのです。

真夏に冬の星座であるオリオンを見るのは、夜の短い夏では明け方のわずかな時間しかチャンスがありませんが、真冬に天の川で最も明るい部分が流れている夏の星座であるいて座付近の銀河などは夜明け前の5時くらいに簡単に見ることができます。白鳥座付近の複雑な入り込んだ構造などもなんとか認識できるときがあります。真冬に真夏の星座を見るとちょっと不思議な感覚になります。

真冬に5時に起きるなんてとてもできないし、今の季節で見たい、という人のために、とっておきの方法をお教えしましょう。私が子供のころ独りで獲得したノウハウです。それは、空を見上げた状態で、グルグルと体を回転させるのです。目が回らない程度にゆっくりと回ります。すると、夜空をぼんやりと白いものが横切っているのが見えてくると思います。それが天の川です。もっとも、その時間に天の川が地平線近くに横たわっているときには見えません。できれば、頭上に見える時間帯がよいのですが、それには、天の川がどの辺にあるかを知っていた方ができれば望ましいですし、雲を天の川と誤認してしまう危険も避けられます。でも、あまりやりすぎて、目を回して倒れないように注意してください。一旦、天の川と認識できると、からだ全体を回さなくても、首を回すだけでも見えるようになります。

この方法を使うと、3等星くらしか見えない夜空でも天の川を見ることができます。といっても、はっきりは見えませんが、他の部分とちょっとだけ空の濃淡が違うという程度、言われてみればそうかも知れない、という感じです。私の住んでいる場所は、横浜のみなとみらい地区の灯りや、新横浜の日産スタジアムの空に向けたサーチライトの灯りなど光害が溢れていますが、それでも天気のよい日にはこの方法で天の川をなんとか確認することができます。

ちょっと技術的な解説をすると、人の目の網膜で一番感度の高い部分は、視野の中央から少し外れたところにあります。淡い光を見るときは、視野の中心でじっと目を凝らして見るのではなく、ちょっと視線をそらして見たほうが良く見えるのです。また、濃淡が少ない場合、視野の中で静止しているものよりも移動しているものの方が視認しやすいという傾向があります。太陽の光が射した白い壁の上にゆらゆらと陽炎のようなものが視野の片隅に見えて、ふと視線をその方向に向けると見えなくなってしまう、といった経験はありませか?天の川とそれ以外の空との濃淡の差は非常に少ないのですが、空を見上げならが体を回転させることで、これらの効果が現れるのだと思います。

下の写真は、NASAのページものです。銀河の中心方向にある、いて座付近です。人物との合成写真ですが、大草原や砂漠などの本当に何もないところでは、このように天の川の明かりで影ができるとも言われています。もしかしたら、ネコなどの夜行性動物の目にはこのような景色が見えているのかも知れません。