数学する精神

良書である。数学はややもすると人間味のない無味乾燥で論理的な学問と思われているが、決して非人間的なものではなく、機械(コンピュータ)では絶対に発見することのできない深くて美しい定理を発見できるのは人間だけであり、数学の研究は人間の精神活動そのものである。この数学の本質を平易に広く一般の人にも理解できるように緻密に計算されて本書全体が構成されている。パスカルの三角形と二項定理および組み合わせの数という全く別々の意味を持っていたものが実は深い対応関係があるということを示しながら、記号と意味について論考し、数学にはタブーがないとp進数の入り口まで読者を案内する流れは見事である。

数学する精神―正しさの創造、美しさの発見 (中公新書 1912)

数学する精神―正しさの創造、美しさの発見 (中公新書 1912)